Evil Geniusesが11月2日に活動終了 ─ 2023年では開幕1勝4敗から世界王者へ、約27年にわたる名門チームの歴史を振り返る

2026年10月21日、北米を拠点とするeスポーツチーム「Evil Geniuses」(以下、EG)は、11月2日をもって競技活動および日常業務を終了することを発表しました。
1999年の創設から約27年。さまざまなタイトルで実績を残してきた名門チームが、その活動に幕を下ろすことになります。
VALORANT部門では、2023年に日本開催の「VALORANT Masters Tokyo 2023」で準優勝を果たし、同年の「VALORANT Champions 2023」では世界王者に輝きました。
今回の発表で、EGのCEOであるChris DeAppolonio氏は、ここ数年にわたって組織の運営体制を再構築し、経営の安定化やファンからの信頼回復に取り組んできたことを説明しました。
新たなゲームタイトルへの参入やクリエイター部門の拡大など、組織の立て直しを進めてきたものの、eスポーツ業界全体が直面するスポンサー不足や、トップレベルで競技を続けるためのコスト上昇が大きな課題になっていたといいます。
こうした状況を踏まえ、現在の環境では責任ある形で事業を継続することが困難であると判断し、活動終了を決定しました。
EGは今後、所属する選手やコーチ、スタッフと協力しながら段階的に活動を終了する方針です。
また、すべての競技部門の選手について、発表時点から他チームとの交渉を認めることを明らかにしています。VALORANT部門の選手およびコーチについては、2026年シーズンが終了する11月2日から新チームとの契約が可能になるとしています。
EGがVALORANTの競技シーンに参入したのは、2021年1月のことでした。
当初はTemperature、ALEKSANDAR、Osias、clawdia、potterの5名でロスターを構成。後に世界王者へとチームを導くpotter氏も、この頃は選手として活動していました。
しかし、参入初年度はVCTの北米大会で目立った成績を残すことができず、ロスター変更を繰り返すシーズンとなりました。
同年8月にはpotter氏がコーチへ転向し、Boostio選手がトライアルとして参加。9月には正式加入が発表されました。翌2022年にはjawgemo選手やC0M選手らを迎え、徐々にチームの基盤を築いていきます。
そして2023年、EGは新たに創設されたVCT Americasのパートナーチームとしてリーグへ参戦。Ethan選手やBcJ選手らを迎え、国際大会出場を目指すことになりました。

2023年のEGは、決して順調なスタートを切ったわけではありませんでした。
「VCT 2023: Americas League」では、Cloud9や100 Thievesに敗れ、開幕2連敗と苦戦します。
そんなチームの転機の一つとなったのが、Demon1選手の起用です。
EGは4月、当時メインロスターに所属していたBcJ選手をベンチに移し、Demon1選手を起用することを発表しました。
その後もチームは1勝4敗と厳しい状況が続きましたが、徐々に調子を上げ、残る4試合で3勝を記録。Playoffs進出を決めます。
Playoffsでは最終的に3位となり、日本で開催される「VALORANT Masters Tokyo 2023」への出場権を獲得しました。
Masters TokyoでもEGの快進撃は続きます。
グループステージではFUT EsportsとDRXを破り、Playoffsへ進出。その後はLOUD、Team Liquidをいずれも2-0で下し、Upper Finalへ駒を進めました。
Upper FinalではFNATICに1-2で敗れたものの、Lower FinalではPaper Rexとのフルマップに及ぶ接戦を3-2で制し、Grand Finalへ進出しました。
特にPaper Rex戦では、Demon1選手が5マップを通して99キルを記録するなど、チームの勝利に大きく貢献しました。
Grand Finalでは再びFNATICと対戦しましたが、マップカウント0-3で敗北。惜しくも優勝には届かなかったものの、国際大会初出場で準優勝という結果を残しました。
シーズン開幕時には1勝4敗と苦しんでいたチームが、わずか数か月で世界2位にまで上り詰めたのです。

Masters Tokyoで準優勝を果たしたEGは、その約2か月後に開催された「VALORANT Champions 2023」で、ついに世界の頂点へと到達します。
Boostio、Ethan、C0M、jawgemo、Demon1の5名を中心としたロスターは、グループステージを無敗で突破。PlayoffsでもEDward Gaming、DRXを破り、Upper Finalへ進出しました。
しかし、Upper FinalではPaper Rexに1-2で敗れ、Lower Bracketへ回ることになります。
それでも、Lower FinalではLOUDとのフルマップに及ぶ接戦を3-2で制し、Grand Finalで再びPaper Rexと対戦しました。
8月27日に行われたGrand Finalでは、第1マップのスプリットを13-10で先取。第2マップのアセントは11-13で落としたものの、第3マップのバインドを13-5、第4マップのロータスを13-10で勝利し、マップカウント3-1で世界王者に輝きました。
この優勝により、EGは北米チームとして初めてVALORANT Championsを制覇しました。
また、当時ルーキーとして注目を集めていたDemon1選手に加え、IGLのBoostio選手、チームを支えたEthan選手とC0M選手、デュエリストとしても活躍したjawgemo選手、そしてチームを率いたpotterコーチにとっても、キャリアを象徴するタイトルとなりました。
Masters TokyoでFNATICに敗れた悔しさを乗り越え、ChampionsではUpper Finalで敗れたPaper Rexへのリベンジを果たしたEG。
その歩みは、2023年のVALORANT競技シーンを語るうえで欠かせないものとなっています。

しかし、世界王者となったEGは、2024年シーズンに向けて大幅なロスター変更を迎えることになります。
2023年12月にはDemon1選手とEthan選手がNRGへ移籍。翌2024年1月にはBoostio選手とC0M選手もチームを離れ、それぞれ100 Thieves、LEVIATÁNへと移籍しました。
世界制覇を経験したスターティングメンバーのうち、2024年に残留したのはjawgemo選手のみとなりました。
EGはその後、Apoth、Derrek、NaturE、supamenの4名を新たに迎え、potterコーチのもとでチームを再構築します。
新体制で臨んだ「VCT 2024: Americas Kickoff」ではベスト4に入ったものの、Stage 1はベスト8、Stage 2は9位で終了。国際大会への出場権を獲得することはできませんでした。
さらに同年10月には、2023年の優勝メンバーとして唯一チームに残っていたjawgemo選手も退団。
この時点で、世界王者となった当時のスターティングメンバー全員がEGを離れることになりました。

2024年12月には、かつてOpTic Gamingなどで活躍したyay選手と、G2 Esportsに所属していたicy選手が加入。NaturE、Derrek、supamenを含む5名で2025年シーズンに挑みました。
「VCT 2025: Americas Stage 1」では、グループステージを3勝2敗のGroup Alpha 4位で通過。PlayoffsではCloud9、KRÜ Esportsをいずれも2-0で破り、ベスト4まで勝ち上がりました。
しかし、Masters Torontoへの出場権を懸けたG2 Esportsとの試合に1-2で敗れ、国際大会復帰には届きませんでした。
続くStage 2でもPlayoffsへ進出しましたが、100 Thievesに0-2で敗北し、ベスト8で敗退。
世界制覇を経験したpotterコーチのもとで新たな体制を築いてきたEGでしたが、2025年も国際大会への出場権を獲得することはできませんでした。

2026年も、EGのロスター再編は続きました。
シーズン開幕時には、かつて世界制覇をともに経験したC0M選手が復帰。ブラジル出身のdgzin選手やbao選手らも加わり、新たな体制でスタートしました。
しかし、「VCT 2026: Americas Stage 1」では開幕から敗戦が続き、最終的に0勝5敗でグループステージ敗退となりました。
その最中の5月にはC0M選手とOkeanos選手をベンチに移し、アカデミーチームからPaincakes選手とzerona選手を昇格させることを発表。コーチ陣にも変更を加え、再びチームの立て直しを図りました。
そして迎えた「VCT 2026: Americas Stage 2」では、グループステージを2勝3敗で終え、Play-Insへ進出。
Play-InsではCloud9を2-1で破ると、KRÜ Esportsにも2-1で勝利し、Playoffsへの出場権を獲得しました。
しかし、Playoffs初戦のMIBR戦では、マップカウント1-2で敗北。ベスト8で大会を終え、2026年シーズンの戦いに幕を下ろしました。
2023年の世界制覇から3年。EGはその後もロスターの再編を繰り返し、再び国際大会の舞台へ戻ることを目指してきましたが、Masters TokyoやChampionsで見せた躍進を再現することはできませんでした。

2027年からのVCT Americasでは、パートナーチームの枠が従来の10チームから8チームへ縮小されます。
新たなパートナーチームとして発表された8組織にEGの名前はなく、来季以降の活動が注目されていました。
EGは今後、所属する選手やコーチ、スタッフと協力しながら、段階的に組織の活動を終了していく方針です。
2021年の参入から約5年。VALORANT部門では、2023年のMasters Tokyo準優勝、そしてChampions優勝という大きな実績を残しました。
なかでも、開幕1勝4敗という厳しい状況から世界王者にまで上り詰めた2023年の快進撃は、VALORANTの競技シーンにおいて、今後も語り継がれる出来事の一つとなるでしょう。
EGとしての競技活動は終了しますが、世界王者となった選手たちや、長年チームを率いてきたpotterコーチが、今後どのような道を歩んでいくのかにも注目が集まります。
活動終了発表時点でのEG VALORANT部門のロスターは以下の通りです。
Paincakes
supamen
bao
dgzin
zerona
potter(ヘッドコーチ)
Faded(アシスタントコーチ)
なる
24歳のライター。推しのVALORANTプロ選手はkaajakとsato。
ArcaneやChampionsスキンなどの限定スキンに弱く、すぐに課金してしまう癖がある。