何度でも蘇る。”暴走列車”Paper Rexの魅力

Paper Rex(以下PRX)は、VALORANT競技シーンにおいて最も語りがいのあるチームと言えるでしょう。国際大会では常にトップレベルの成績を残しながら、地元Pacific地域のリーグでは時に不安定な戦績を繰り返します。この波こそが、このチームを特別な存在にしています。

この記事では、PRXのこれまでの歩みと、その特徴について独自の視点から解説・考察していきます。

VCTにおけるPaper Rex史

PRXの歴史は、2020年にCS:GOのロスターをVALORANTへ転向させたところから始まります。2021年のMasters Berlinに出場した時点では、まだ「アジアの新興勢力」の一つとして見なされていました。

しかし2022年、Jingggの加入によって攻撃力が飛躍的に向上し、Masters Reykjavíkで4位、そしてMassters CopenhagenではSEA初の国際大会グランドファイナル進出を果たしました。
FunPlus Phoenixに破れ、準優勝に終わりましたが、彼らの超攻撃的なスタイルは世界中を魅了しました。

2023年はさらなる飛躍の年となりました。VCT Pacific初代王者に輝き、Masters Tokyoでは代打のSGRSを起用しながら3位、そしてChampions Los Angelsではグランドファイナルまで勝ち上がりました。結果は再び準優勝でしたが、PRXは世界大会で最も恐ろしい対戦相手としての地位を確立しました。

2024年はJingggの兵役問題(後に免除)やロスター変更を経つつも、Masters Madridで3位、VCT Pacific Stage1を制覇するなど依然として上位をキープ。しかし、masters Shanghai5-6位、Champions 2024ではグループステージ敗退など、やや勢いに陰りが見え始めていました。

崖っぷちからの戴冠、2025年の復活劇

2025年シーズンの幕開けは、PRXにとって悪夢でした。

VCT Pacific Kickoffでは、T1にアッパーブラケットで敗れた後、DetonatioN FocusMeに敗北を喫し、Masters Bangkokへの出場権を逃しています。国際大会を逃すのは2021年以来、実に約4年ぶりのことでした。長年PRXを支えてきたmindfreakに代わりPatMenを獲得するロスター変更も加わり、チームは過渡期に入ります。

続くVCT Pacific Stage 1のグループステージではDRX、Gen.G、BOOM Esportsに相次いで敗れましたが、ここでPRXは覚醒します。グループステージ最後の2戦とロウワーブラケット最初の3戦で連続5勝という離れ業を演じ、最終的にDRXを2-0で下してMasters Torontoへの最後の切符を手にしました。

Masters Torontoのプレイオフ初戦でG2 Esportsを2-0で撃破。続く試合ではSentinelsを相手にストレート勝ち。アッパーファイナルでは当時絶好調だったWolves Esportsも2-0で退け、一度もマップを落とすことなくグランドファイナルに到達しました。

決戦の相手は、EMEAの強豪Fnatic。サンセット13-11、アイスボックス15-17、パール13-10、ロータス14-12という全マップが接戦となる死闘を制し、PRXはこれまでの「シルバーコレクター」としてのイメージを払拭し、トロフィーを勝ち取りました。

その後のStage 2ではグループステージを首位通過し、プレイオフでもT1やRex Regum Qeonを下してPacific王者に返り咲きました。Masters Torontoでの優勝が、チーム全体に自信をもたらしたことは明白でしょう。

2026年もPRX節全開

PRXは現在開催中のMasters Santiagoにも出場していますが、切符を手にするまでの道のりは険しいものでした。
Kickoff開幕直前に優勝メンバーからの変更を発表、PatMenに代わりinvyが加入しました。
初戦のGlobal Esports戦を2-1で制すものの、続くRRQ、T1に連敗、もう後がない状況に追い込まれます。

しかし、ここでもPRXは不死鳥の如く復活。ロウワーブラケットで4連勝を果たし、Santiagoへと滑り込みました。

Masters開幕後は、キャプテンf0rsakeNと新加入invyが大爆発、G2とNRGを相手に勝利を収め、プレイオフでもAmericas一位通過のFURIAに勝利。Americasにとって最悪の敵となりました。

なぜ彼らは”世界大会特化”なのか

PRXの国際大会における実績は、VALORANT全体として屈指のものです。
3-4位が4回、準優勝が2回、そして優勝が1回。
VCTの歴史の中でも、PRXほど「国際大会で上位に来るチーム」は、FnaticやSentinelsと並んでごく僅かしか存在しません。

しかし、PRXのPacificリーグ内での成績は、国際大会のそれと比べると不安定と言わざるをえません。

2024年Stage2のグループステージこそ9勝1敗という圧倒的な成績を残しましたが、プレイオフでは勢いに乗り切れず3位という結果に終わりました。そして2025年には状況はさらに悪化し、前述の通りPRXは低迷期へと入りました。

なぜ、ここまで国際戦とリーグ戦での成績に差が生まれるのか、その理由はPRXのプレイスタイルとの相性が関係しているのかもしれません。

「Wゲーミング」の準備しにくさ

PRXの最大の武器は、他のどのチームとも異なる攻撃的なプレイスタイルにあります。選手のフィジカルの強さや柔軟なエージェント選択は、試合内容をカオスにします。MastersやChampionsなどの短期トーナメントでは、対戦相手がこのスタイルに適応する時間が限られており、トロントやサンティアゴでの無敗プレイオフ通過は、この強みが最大限に生きた例です。

一方、リーグ戦は数週間にわたって同じ地域のチームと繰り返し対戦することになります。Pacific地域のチームはPRXと常にスクリムを行い、DRXやGen.Gのような規律あるチームは、PRXの仕掛けに対するカウンターを練り上げる余裕があります。

また、PRXは独自の構成を好みますが、それがメタと噛み合わない時期には成績が落ち込みます。しかし国際大会の時期には、メタが安定している事が多く、PRXは自分たちのスタイルを磨き込んで挑むことができます。

この独自性と予測不可能性こそが、PRX最大の武器であり、最大の弱点でもあると言えるでしょう。

まとめ

Masters Santiago優勝まで残り4勝、NRGへのリベンジを許したことで、PRXは1敗もできない状況に追い込まれました。
新加入invyとの連携も日に日に向上し、2026年のPRXが”完成”しつつあります。

PRXは、3月11日 6:00からAll Gamersと対戦予定です。中国リージョン最後の希望AGと、背水の陣でこそ真価を発揮するPRXによる、生き残りをかけたデスマッチに注目です。

黒瀬

猫となかよく

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