SCARZ Art「良い部分も悪い部分も、どうせならもっとリアルに映したい」「grayを推した理由は、圧倒的な素直さ。自分には絶対ないものを持っている」―部門の再始動ドキュメンタリー「THE ART OF WAR」で見せたいもの、ロスターを選出した新生SCARZの手応えを訊く

2026年10月25日、東京・渋谷のSCARZオフィスにてVALORANT部門のファンミーティングが開催されました。VALORANT部門の再始動を追うドキュメンタリーシリーズ「THE ART OF WAR」で発表された、新体制のSCARZがファンの前に登場。トークショーや対決イベントなどが行われました。
今回はファンミーティング終了後、Artコーチにインタビュー。選手からヘッドコーチへと立場が変わるなかでの試行錯誤、「THE ART OF WAR」に対する率直な思い、そして来シーズンに向けた新生SCARZとしての手応えなどを聞きました。

――まずは、ファンミーティングを終えてどうでしたか?
Art:いきなりネガティブな話でもいいですか?(笑)
――(笑)。ひとまず聞かせてください。
Art:ファンミーティングをやれたことはもちろん嬉しいんですけど、自分だけの話で言うと、ファン減ったなと思いました。選手をやっていた期間も2年くらい負け続きだったし、配信とかもあまりしてこなかったので、そういう活動も頑張っておけばよかったなって。
裏方に徹しているなら問題ないんですけど、「THE ART OF WAR」で自分がドンと表に出ている分、そのギャップがちょっと苦しいなと。人前に出るって大変だなと、いろいろ考えさせられました。
――立場が変わって、いろいろ葛藤する部分もあると。ロスターを選出した新生SCARZの、チームの雰囲気はどうですか?
Art:熱血界隈ですね。チーム練習自体はそんなに長い方ではないと思うんですけど、個人練習も各々すごく頑張っています。仲も良いし、自分も含めて「みんな頑張ってるから、自分もやろう」みたいな。これを続けていれば、ちゃんと勝つだろうという、勝つチームのオーラをみんなから感じます。
――お互いのモチベーションの高さが伝播していく感じですね。
Art:そうです。ただ、今は別に平気だし、みんな頑張れると言ってくれるんですけど、これから長い期間を戦っていくことになるので。自分はシーズン中に疲れてしまったりする人間だから、休むこともすごく大事だと思っているんです。
だから、それぞれ1人の時間をちゃんとつくったり、みんなでご飯を食べに行ったりとか。最近はチーム内でサウナブームが来ていて、一緒にサウナに行ったりもして、休める時間をつくることを意識していますね。
――ファンミーティングで、今ゲーミングハウスで生活しているという話題が出ていました。全員で同じところに住んで練習するスタイルですか?
Art:選手5人はゲーミングハウスに住み込みですね。僕を含むコーチはそこに通っていて、お昼頃に行って終電くらいに帰る生活をしています。
――チームに2009年生まれが2人(gray選手とKellan選手※)いて、かなり若いですよね。今日も賑やかそうな様子が伝わってきました。
Art:若すぎてついていけない(笑)。僕も精神年齢は若い方だと思うんですけど……。うるさすぎて人に迷惑をかけたりとか、そういうラインを超えることがなければいいのかなとは思ってます。
※インタビュー実施後、2027 VCT Pacific Kickoff Japan Qualifierにおける大会出場可能年齢の変更を受け、Kellan選手の出場を見送ることが発表された。Kellan選手は12月生まれで、Open Qualifiersの初戦の時点で満17歳以上の条件を満たせないため。

――では、公開された「THE ART OF WAR」についても聞いていきたいと思います。映像を見た感想はどうでしたか?
Art:うーん……。もっと映してほしいなって思うところはあります。良い部分も悪い部分も、どうせならもっとリアルに映したいなって。あとは、僕とかgrayにスポットが当たっていたけど、もっと僕じゃないところにフォーカスを当てたいですね。
Kellanは人柄がすごくかわいくて、練習も一生懸命だし。SacrificEは自信があるように見えるけど、実は自分の中で葛藤していたりとか。そういう選手たちの魅力をもっと映したいし、見てほしいというのはあります。
――思ったより無難な内容になっているなという感じですか?
Art:そうですね。置きにいってる感じ。映さないでほしいところもあるから、カメラマンさん含め、制作している人たちもすごく大変だし、難しいと思うんですけど。今のところ、大々的に打ち出した割には、と思っています。今後は、もっと泥臭いシーンも見せていきたいですね。
――公開後の反響の大きさや、視聴者の反応はどう感じましたか?
Art:反響は大きかったと思うけど、思っていた反応とは違ったかな。本当は、これを見て「SCARZを応援したい」とか「自分もコーチをやってみたい」とか、人の感情が動くきっかけになるような、何か影響を与えられるものにしたい。けど今は、なんとなく消費されるコンテンツになっている気がします。
――コメント欄の反応なども見ましたか?
Art:見ました。まぁ叩かれてるなとは思いましたけど、的を射ているものはしっかり受け止めつつ、そうじゃないものは受け流すようにしています。全部を真に受けすぎても、振り回されてしまうので。

――こうした成長を見せるドキュメンタリーは、注目を集める反面、批判的な声が目に入りやすいという副作用的な面もあると思います。
Art:全然かわいいもんですよ。DetonatioN FocusMeでPaper Rexに負けてKD -32した時は、もっと過激なこと言われたから、なんとも思わないです。あれを経験したら、ぶっちゃけもう何も怖くないって感覚はあります。
批判に傷つくこともあるけど、見てもらわないと成り立たないコンテンツでもあるし、アンチがファンになったら一番面白いじゃないですか。批判の声に対しては、むしろ見てもらってるだけありがたいなと思ってます。
――選手に対する行き過ぎた批判って、やっぱり直接DMとかでも来るんですか……?
Art:かなり過激な内容のDMとか、めっちゃ来ましたよ。当時は、自分に自信がなかったから、本当にもう人生終わりかもって思いました。でも、中国のオフシーズン大会でかなり勝った後だったから、期待の裏返しでもあったかなって。良いこともあれば悪いこともあるから、今となっては良い経験です。
――今回は、gray選手がいろいろ言われやすかったと思いますが、そこに対するフォローも気になりました。
Art:grayは芯が強いので。気にして落ち込んではいましたけど、それは自分でいう結果と同じで、練習の充実感がないとそこに気が向いてしまうものだと思うんです。やっぱり練習の充実感があれば、「別に何を言われても」と思えるし。そういう充実感のある日々を送ることで、結果的にgrayも気にしなくなっていったと思います。

――ドキュメンタリーを見ると、コーチとしての振る舞いを試行錯誤されていた印象もありました。海外風のあいさつも、その1つだったのかなと思うのですが。
Art:あれは選手との距離を近くしたいというのが大きくて、次の試合への切り替えにもなるし、そこから話すきっかけにもなるじゃないですか。この前もみんなで公園に行ってバスケをしたんですけど、やっぱり身体の距離が近いと仲良くなるんですよ。
自分がもともとコミュニケーションが苦手で、そういうちょっと不器用な方法しかわからなくてやっていたというのもあります。あとは、海外の強いeスポーツチームでやっていないチームを見たことがないから。原理はよくわかんないけど、やってみようみたいな。
――イメージするのが海外チームだったから、英語だったんですか?
Art:英語はただのイキりです(笑)。コメント欄でもいじられてましたけど。
――じゃあ、韓国人メンバーがいるからとかは関係なかった……?
Art:全然関係ないです。エセ英語も出るし、エセ韓国語も出るし、エセ関西弁も出ます(笑)。自分らしくいた方が話しやすいので、今は全然「おはよう〜」とか言ってます。
――なるほど(笑)。あの時期のマイブーム的な。
Art:そうです。なんかちょっと、“What's up?”とか言いたくなっちゃった。

――もともとgray選手のSCARZ加入の背景には、Artさんの推薦があったと聞きました。公開トライアウトでも、最終的にArtさんが彼を強く推していましたよね。gray選手に対する思い入れの強さの理由は、どんなところにあるんでしょうか?
Art:圧倒的な素直さですね。grayのそういう人間的な才能の部分と、あとは目の良さ。最初は、反応が速くて撃ち合いが強いから、若いし何色にでもなれるだろうという印象でした。その上で、チームで一緒に過ごしていて思うのは、ありえないほど素直ですね。
自分には絶対ないものを持っているから、grayを推した理由はそこかな。本人は「SugarZ3roを超える」みたいに言って、今はまだイジられてるけど、全然なくないと思う。僕は彼がすごいプレイヤーになると思ってます。
――デュエリストだったgray選手に、コントローラーを任せた理由も気になります。コントローラーを担える日本人選手の層が薄いという背景もあるようですが、彼のどういったところに適性を感じたのでしょうか?
Art:あの不器用さがいいんですよね。器用な人はうまぶっちゃうけど、不器用だからこそ、チームの輪を乱すプレイをあまりしない。それってセンチネルとかコントローラーに必要な要素だと思うし、その上で1対1で負けない撃ち合いの強さも持っています。
なにより素直さがあるから、指摘したプレイは絶対に直すんですよ。逆に、教えていないことはできない。言ったところがちゃんと直るっていうのは、コントローラーをやる上ですごく大事だし、そこが向いているなと思います。
――素直さというキーワードは、ドキュメンタリーを見た人からすると、真逆と言っていい印象なんじゃないかなと思います。
Art:びっくりするくらい素直ですよ。人によっては、ひねくれてるように見えるかもしれないけど、17歳って感じでかわいいやつだと思います。

――ドキュメンタリーでは、Artさんがgray選手のプレイに対してシビアなコメントをしている場面も多かった印象です。
Art:できていないことは、はっきり言うので。言ったら直るのに言わないのはもったいないと思うから、特に遠慮はなかったです。本人にとっては負荷だったかもしれないけど、それで折れないと思っているから。そもそも、興味がない選手には言わないですからね。
――期待の高さゆえだったと。来シーズンが11月中に始まるとされていますが、スクリムの手応えはいかがですか?
Art:手応えとしては、たぶん強いですよ。KellanかSacrificEが上振れればゲームが壊れるし、日本人3人は下振れることがあまりない。thiefyのIGLも、日に日にまわし方が上手くなっています。
ただ、最強マップは最強だけど、負けるマップは負ける。そういう不安定さがまだありますね。しかも、新エージェントのハッシュが追加されて、明らかに強いから取り入れないわけにはいかない。マッププールやエージェントのメタが変わるので、ロールの調整も必要になってきます。
大会7マップのうち、バンピックを考慮して4マップくらいできれば戦えると思うので、その4マップを完成させることに注力したいですね。あと、僕のタイムアウトには注目してほしいです。みんなに褒められて自信持っちゃった(笑)。もう少し準備は必要だけど、それが終わったら早く大会やりたいなって気持ちです。
――それでは最後に、来シーズンへの意気込みと応援してくださる方々へのメッセージをお願いします。
Art:しばらく結果が出せていない自分としては、こういう意気込みを言うのがすごく苦手なんです。本当は「勝ちます!」とか言いたいんですけど、言ったことを実行できていないから、オオカミ少年すぎて。
でも、来シーズンは自分とチームの価値をしっかりと示して、応援してくださっている人にも、なによりSCARZにも、ちゃんと恩返しをしたいと思っています。価値を証明するためにも、来シーズン頑張りますので、応援よろしくお願いします。

綾本ゆかり
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