『ドリームチーム』はなぜ沈む?スターを集めても勝てないVALORANTの真実
オフシーズンのSNSは、シーズン中と同じくらいコミュニティが熱を帯びる期間です。
「あの最強デュエリストと、伝説のIGLが手を組む?」
「この5人が揃えば、グランドスラムも夢じゃない」
飛び交う噂、リツイートの嵐、きらびやかに加工された「Welcome」の画像。私たちは、その豪華なロスターを見た瞬間、まだ始まってもいないシーズンの覇者を想像し、胸を躍らせます。
しかし、VCTの過去数年を振り返ってみると、「最強のロスター」が必ずしも予想通りの結果を出せるとは限らないようです。前評判通りの圧倒的な力で世界を制圧したドリームチームが、果たしてどれだけ存在したでしょうか?
むしろ、私たちの記憶に色濃く残っているのは、巨額の契約金で集められたスター軍団が、結成したばかりの名もなき若手チームの連携の前に膝をつき、あっけなく解散していく姿ばかりではないでしょうか。
なぜ、5人の王を集めても勝てないのか?
今回は、その残酷ともいえるメカニズムについて、筆者の視点から解説します。
最初の、そして最も致命的な要因は「シナジーの欠乏」です。
個人のフィジカルは、移籍金さえ払えば買うことができます。しかし、一瞬の判断を共有する「阿吽の呼吸」だけは、時間と経験でしか培うことができません。選手同士の相性というのも、少なからず存在します。
むしろ、これは一種の「ギャンブル」であると言えます。オフシーズン時点では、どんな選手の組み合わせがどんなシナジーを発揮するか、誰にも分からないのです。
Demon1やEthan、Marvedといった「王」を集めた2024年のNRGや、巨額の資金を投じてyayを獲得したBleed Esportsが皆の予想に反した結果を迎えたのは、記憶に新しいでしょう。個々の能力は高くても、カバーの意識やスキル合わせのタイミングがコンマ数秒ズレるだけで、プロの試合では命取りになります。
対照的だったのが、同年のTeam Hereticsです。彼らは当時、決して「スター軍団」ではありませんでした。しかし、Wo0tやRieNsといった若手たちが、共通の理解と情熱を持って戦うことで、多数のスーパーチームをなぎ倒し、世界の頂点に肉薄しました。

次に立ちはだかるのが、ロールの壁です。
選手それぞれには「得意なロール」が存在します。しかし、新たなロスターでプレイするときには、必ずしも希望する役回りになれる訳ではありません。
本来デュエリストで輝く選手がコントローラーをプレイしたり、世界最高峰のスモーク使いがセンチネルに配置転換されたりします。
2023年のSentinelsは、残念ながら「失敗例」として挙げることができます。
彼らは、前年に世界王者となったLOUDからpANcadaとSacyを獲得しました。pANcadaは当時「世界最高峰のコントローラー」と称されていた選手でした。しかし、チームの事情により、彼はセンチネルへのコンバートを余儀なくされました。

それが原因であると断言することはできませんが、移籍以降のpANcadaのパフォーマンスは低下し、Sentinelsはファンが期待したような戦果を上げること無く解散することとなりました。
一方で「ロールのコンバート」を成功させた稀有な例もあります。2024年のGen.Gです。
今や「ラークするだけでサイトを壊滅させる最強センチネル」として名高いMeteorは、かつて日本シーンで圧倒的な破壊力を見せていたデュエリストでした。
本人も、Gen.Gではデュエリストをプレイすることを望んでいたと語っていますが、チームにはt3xtureという別の強力なデュエリストがいました。
ロールの衝突による崩壊の可能性もある中、なぜ彼らは成功したのでしょうか?
それは「無理な押し付け」ではなく、本人の高い適応能力と、本人の個性に合わせた柔軟なコンバートだったからだと考えられます。
Meteorは単に役割を変えただけでなく、彼の得意なプレイスタイルに合わせ、センチネルでありながら高い火力を出すという、新たな境地を開拓しました。

同じ「コンバート」でも、チームのしわ寄せをスター選手に負担させるのと、選手の適正に合わせて戦術自体を作り変えるのとでは、大きな違いが生まれます。
そして、見落とされがちなのが、精神的な重圧です。
ドリームチームは、結成された瞬間から重荷を背負う運命にあります。「勝って当たり前、負ければ失敗」という世間の目は、選手を無意識に蝕む「猛毒」となります。
通常のチームなら許される「調整期間の敗北」も、彼らの場合は「解散の危機」として報じられます。
注目される立場にあるプロがプレッシャーを感じるのは当然のことですが、過度に視線を向けられた選手は、無意識のうちに失敗を恐れてしまいます。安全策を取るあまり、結果として本来の爆発力を失ってしまいます。
今までのVCTでも、「アンダードッグ」と思われていたチームがリラックスして実力以上のパフォーマンスを発揮するのに対し、かつての積極性を失ったスター軍団が敗れる構図が必ず存在しました。

今回の記事では、VALORANTは、個の力の「足し算」ではなく、役割と連携の「掛け算」で勝敗が決まるゲームである、と考察しました。
間もなく幕を開ける2026年シーズン。
今年もいくつかの「ドリームチーム」が注目を集めています。
MIBRに所属する王者Aspasの元にzekkenやtex、Mazinoといったスターがアメリカ中から集結しました。
𝐘𝐨𝐮 𝐚𝐫𝐞 𝐧𝐨𝐭 𝐝𝐫𝐞𝐚𝐦𝐢𝐧𝐠, 𝐰𝐞 𝐫𝐞𝐚𝐥𝐥𝐲 𝐝𝐢𝐝 𝐢𝐭. 😤 pic.twitter.com/FXPKnFRtR4
— MADE IN BRAZIL. (@MIBR) December 18, 2025
T1にはこれまで通りの強力な4人に加え、Munchkinという新たな基盤を据え、盤石の体制を築いています。
必ずしも「ドリームチーム」が失敗するということはありません。むしろ、パワーを持つ5人がシナジーを発揮すれば、それこそ真の「最強ロスター」となりなり得ます。
しかし、その理想を実現させられるかは、シーズンが始まるまでは誰にも分かりません。
2026年最初の公式大会、注目のKickoffは今週から各地で開催予定です。
黒瀬
猫となかよく