世界を獲った「MVP選手」、今どこに? Champions 2021〜2025、スターたちのその後

VALORANTの世界大会「VALORANT Champions」
年に一度、世界のトップチームが集い、その年でもっとも強いチームを決める、VALORANT競技シーンの最高峰イベントです。

世界王者として歴史に名を刻むのはチーム全体ですが、大会の中でもひときわ強烈な存在感を放ち、観客の記憶に刻まれるのが「MVP(最優秀選手)」という称号です。

この「MVP」を手にした選手たちは、その後どのようなキャリアを歩むのでしょうか。

MVPの称号を手にしたからといって、安全な道が保証されるわけではありません。
圧倒的なスターとしてTier1の舞台に君臨し続ける者もいれば、移籍・不調・チーム不和など、思わぬ苦難に直面する者もいます。

今回は、2021年から2025年までのChampionsでMVPの称号を獲得した選手たちを取り上げ、彼らがその後どのような道を歩んだのかを振り返っていきます。

また、過去に公開した「Championsの呪い」についての考察記事も参考になる内容です。併せて読むことで、Championsの奥深さをより楽しめるでしょう。

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それではまず、初代Champions(2021年)から、その年ごとのMVP選手たちの「栄光の瞬間」と「その後」を見ていきましょう。


2021年:初代世界王者とMVP — zeekの「栄光」

2021年12月、ベルリンで開催されたVALORANT Champions 2021。16チームが王者を争うこの初のChampionsで、ヨーロッパ代表のAcendが見事優勝を果たしました。
決勝ではGambit Esportsを3–2で下し、Acendは初代「世界王者」の称号を得ています。

そしてこの快挙を陰で支えたのが、Acendのフレックスとして活躍したzeekです。
大会全体を通じて安定したパフォーマンスを見せ、MVPに選出されました。

特に決勝戦でのクラッチは伝説のクリップとなりました。
Grand Finalの第1マップの第4ラウンドでは、2v4という不利な状況から、ダブルヘッドショット → さらにもう2キル、そしてスパイク爆発まで残り0.22秒というぎりぎりのタイミングでのディフューズ成功。まさに「Champions MVP」にふさわしいプレイでした。

「栄光」の裏側 — MVPの称号が保証しなかったその後

しかし、MVPの称号を得た翌年、状況は一変します。

2022年7月、Acendは「zeekをスターティングロスターからベンチへ降格する」という決断を発表。チームの成績不振や再編の一環との説明でした。

さらに同年9月、正式に「zeekとの契約を終了」と発表。チーム公式Xでは次のようにコメントされています:

“An integral part of our path to the Champions title … we would like to thank zeek for his contribution under the Acend banner and wish him best of luck moving forward in his career.”
訳:Championsタイトル獲得への道のりにおいて不可欠な存在でした…Acendの一員として貢献してくれたzeekに感謝するとともに、今後のキャリアにおける幸運を祈ります。

また、2022年3月には「精神的な理由」により一部試合を欠場しています。

このように、「世界王者かつ大会MVP」という栄誉を得たものの、わずか数か月〜1年足らずでチームを離れ、しかも「ベンチ入り」という苦境を経験することになったのです。

その後、zeekはTeam HereticsからGoNext Esports、Incognito、Enterprise Esportsへと移籍を重ね、さまざまなチームでプレーしてきました。現在は2026年シーズンに向けてフリーエージェントであることを表明しています。

まだ24歳と若く、Tier1に復帰するだけの時間と可能性は十分に残されています。初代MVPがもう一度大舞台に戻ってくる日は訪れるのか —— 2026年以降の動向に注目が集まります。

2022年:LOUDの栄光 — ブラジルの「英雄」aspas

2022年にイスタンブールで開催されたChampionsでは、ブラジル代表のLOUDが優勝し、世界王者に輝きました。圧巻のパフォーマンスにより、aspasは多くのメディアやコミュニティでMVPとして扱われています。

ただし注意点として、Riot Gamesは2022年、公式の「Champions MVP」を発表していません。したがって「aspasが公式MVPである」というのは各メディアや大会ハイライト、RiotのSNS投稿などを総合した評価に基づいています。

aspasのその後 — 複数チームを渡り歩く英雄

LOUD優勝後もaspasはチームの中心選手として活躍を続けましたが、2023年9月、自身のX(旧Twitter)で契約満了を報告し、フリーエージェント(FA)になったことを明言しました。

本人の投稿には、次のようなコメントが残されています。

「Meu contrato com a LOUD terminou and with that I am a free agent and open to hearing proposals.
I would like to thank LOUD for these 2 years and for everything they did for me.
訳:LOUDとの契約が終了し、フリーエージェントになりました。2年間支えてくれたLOUDに感謝しています。

その後、2023年10月にLeviatánへ移籍。
Leviatánは2024年のVCT Americas Stage 2を制し、Champions 2024でもベスト3に入るなど国際大会で存在感を示しました。

しかし2024年11月、LeviatánとMIBRが契約買い取りに合意し、aspasの移籍が正式決定。報道によれば、aspasは組織内で自身の意見が反映されにくい点に不満を抱いていたとも言われています。

2024年11月27日、MIBRはaspasの加入を公式発表し、2025年シーズンのロスターが完成しました。以降、aspasは主力デュエリストとしてチームを牽引しています。

MIBRの2025年シーズンは、KickoffとStage1でいずれもAmericas地域3位とまずまずの成績を残したものの、Masters Toronto 2025は11位タイ、Stage2は9位タイと振るいませんでした。その結果、Championsポイントでギリギリ滑り込みのChampions出場となり、世間からの期待は低い状況でした。

ところがChampions本戦では、MIBRがまさかの快進撃を見せ、最終順位5位タイを獲得。特にaspasの個人成績は大会全体でも上位に入る活躍で、「aspasのChampionsバフ」という言葉が多く上がりました。

LOUD時代から「大舞台になるほど力を発揮する」姿は健在で、彼が依然として世界トップレベルのスターであることを改めて感じさせる結果となりました。

先日、MIBRはaspasとの契約を2027年末まで延長することを正式に発表しました。
これにより、あと2年間は故郷ブラジルのチームでプレーすることが決まり、aspasは再び世界王者のタイトルを狙う戦いを続けていきます。

2023年:突如として現れた「悪魔」 ― Demon1の3年間の軌跡

2023年にロサンゼルスで行われたVALORANT Champions 2023では、Americas地域のEvil Geniusesが優勝しました。大会MVPにはデュエリストとして活躍したDemon1が選ばれています。Demon1は2022年まで大きく知られた選手ではなく、Tier1でのプレー初年度に世界一となったことから、一気に世界中の注目を集めました。

同年のMasters Tokyoでも準優勝を果たしており、デビューして間もない若手ながら、大舞台で堂々と力を発揮できる選手として評価が固まりました。ここから、彼のめまぐるしいキャリアが始まります。

2024年 ― 新天地NRGでの挑戦と、思わぬ苦戦

2023年末、Evil Geniusesの財政難の影響もあり、Demon1はチームを離れ、北米のNRGに加入します。実力者が集まるチームで、再び世界タイトルを狙う挑戦が始まりました。

しかし2024年シーズンは期待どおりには進まず、チームとしても苦しい戦いが続きました。その流れを受け、同年5月にはDemon1がリザーブ(ベンチ)に回ることが発表されます。その後スタメンとして戻る機会は訪れず、前年の活躍とのギャップを感じる難しい1年となりました。

2025年 ― Leviatánを離れ、中国へ。新たな環境への挑戦

2024年10月、Demon1はNRGを離れ、南米の強豪Leviatánへの加入を発表します。Champions優勝時の元チームメイト・C0Mが在籍していたこともあり、ファンの間では「再び化学反応が起こるのではないか」と大きな期待が寄せられていました。

しかしシーズンが始まるとチームは思うように結果を残せず、Demon1自身も立て直しのきっかけをつかめないまま、2025年5月には再びリザーブへ回ることになります。

その後、所属状況は数カ月で大きく動き、2025年8月にはLeviatánを正式に離脱。フリーエージェントとして次のチームを探すことになりました。

そして2025年9月、Demon1は中国のDragon Ranger Gaming(DRG)への加入を発表します。北米、南米、そしてアジアとリージョンをまたぐ移籍は、多くの競技シーンファンを驚かせました。DRGはChampions出場にあたり選手の欠員が出ており、即戦力としてDemon1を迎え入れたかたちです。

Demon1を加えたDRGへの期待は高まりましたが、T1とG2に敗れ、結果は13位タイにとどまりました。異なる文化・言語環境での調整は簡単ではなく、コミュニケーション面での難しさもあったはずです。しかし、この経験はきっとDemon1にとって大きな財産となったでしょう。

現在、Demon1はフリーエージェントとして活動しており、次にどのチームを選ぶのか、引き続き注目が集まっています。

2024年:史上初の中国王者とMVP ― ZmjjKKの「伝説」

2024年8月、ソウルで開催されたVALORANT Champions 2024では、EDward Gaming(EDG)が激戦を制し、中国勢として初めて世界王者の座を手にしました。決勝戦ではTeam Hereticsを3–2で撃破。その先陣に立っていたのがデュエリストのZmjjKKです。

決勝はフルマップにおよぶ激戦となりましたが、ZmjjKKは全5マップを通じて計111キルを記録。これは、当時のVCTにおけるBo5(ベストオブ5)シリーズでの最多キル記録であり、彼の名は一気に「歴史に残るデュエリスト」として刻まれることになりました。

この結果を受け、ZmjjKKは公式にChampions MVPに選出されました。中国代表チームによる国際大会初優勝と、個人としての偉業達成 —— 。間違いなく、Championsを視聴していた世界中の人々に強烈な印象を残したでしょう。

2025年以降の足跡 — 栄光の後、勝負は続く

Champions 2024での衝撃的な活躍から一年。ZmjjKKとEDGは2025年シーズンを迎えましたが、この年は思うような結果を残すことができませんでした。世界大会には2度出場したものの、どちらも早期敗退という悔しい結末に終わります。

Champions 2025の試合後、ZmjjKKは記者会見で自らのパフォーマンスについてこう語りました。

ZmjjKK:去年のようには上手くいきませんでした。メンタルもプレーも、あのときの感覚を失ってしまったかもしれません。

昨年の「王者」としての重圧や、周囲の期待とのギャップがにじむコメントであり、彼が置かれていた状況の難しさが伝わってきます。

2025年はチームとしても国際大会では苦戦が続き、さまざまな試行錯誤を重ねるシーズンとなりました。S1Mon脱退の穴を埋める形で複数の新加入選手が発表され、ZmjjKKを中心に再びチーム力を高めようとする姿勢が見られます。

一方で、ZmjjKK個人の存在感は依然として健在です。Champions 2025のグループステージではトップ10に入るスタッツを記録しており、「世界レベルのデュエリスト」であることを改めて示しています。

栄光の翌年に訪れた苦境と試行錯誤。それでもなお、ZmjjKKは世界トップクラスの選手として次なる飛躍を目指し続けています。

2025年:新人が世界を制した ― brawk の「飛躍」

2025年9月から10月にかけてフランス・パリで開催されたVALORANT Champions 2025では、NRGが激戦の末に優勝し、北米として3度目となる世界王者の座を勝ち取りました。決勝戦の相手は欧州の強豪Fnatic。3マップ目では11-1の状況から逆転負けをするなど、勝利をつかみ取るまで終始手に汗握る展開が続きました。

そのNRGをサポートしていたのが、イニシエーターのbrawkです。Tier2の舞台から一気に駆け上がり、Tier1デビューしたそのシーズンで世界タイトルの主役となったbrawkは、この大会で最も強烈な印象を植え付けた選手でした。

brawkは大会全体を通して安定して高いパフォーマンスを維持し、17マップで220ACS・145 ADR・1ラウンド平均0.73キルという見事な数字を残しました。決勝でも84キルを記録するなど、大事な場面でしっかりと存在感を発揮し、Champions 2025のMVPに選出されました。

Champions優勝後の足跡

世界の頂点を経験したbrawkは、現在も NRG の主力としてプレーを続けています。

11月に行われた Red Bull Home Ground では、決勝でG2に敗れたものの、それまでは一度もマップを落とすことなく決勝まで進出。メンバー変更はありましたが、チームとしての完成度と、優勝メンバー4人を中心とした新生NRGの強さは健在であることを示しました。

2025年は彼にとってキャリアの転換点ともいえる躍進の一年となりましたが、brawkの挑戦はまだ続きます。
2026年のシーズンでも、彼がどのような成長を見せ、再び世界の舞台で輝きを放つのか――。大きな期待が寄せられています。

MVP選手がつくる、VALORANTの歴史

2021年から2025年までの5年間で、VALORANT Champions におけるMVP選手たちは、世界中のファンに鮮烈な印象を残しました。
MVPという称号を手にした瞬間はもちろん、それぞれの選手がその後どのようにキャリアを築いていったのかも含めて、非常にドラマに満ちたものだったように思います。

2021年の初代MVPは、競技シーンの始まりを象徴するかのように、その年のChampionsを大いに沸かせました。

2022年には「大舞台に強い選手」が評価され、その落ち着きと安定感でチームを世界王者へと導きました。

2023年は、個の爆発力が語り継がれる一年で、MVP選手のプレーは世界中のファンに深い印象を残しました。

2024年には、成熟したチームで中心的な役割を果たしながら、大会を通して安定して高いパフォーマンスを続けた選手が頂点に立ちました。

2025年にはついに、新人のbrawkが世界王者とMVPを同時に獲得するという、シーンでもめったに見られない快挙が生まれました。若い才能が一気に世界へ羽ばたく瞬間は、多くのファンに希望と興奮を届けてくれました。

MVP選手は、単純に「強かった選手」というだけでなく、その年のVALORANTの象徴として競技シーンの流れを動かしてきた存在であることが分かります。それぞれの栄光が積み重なり、このゲームの歴史はより豊かなものになっていると実感します。

これからも、彼らがどんな活躍を見せてくれるのか、そして新たなMVPがどんな物語を生み出してくれるのか、2026年以降のシーンがとても楽しみです。

なる

24歳のライター。推しのVALORANTプロ選手はkaajakとsato。
ArcaneやChampionsスキンなどの限定スキンに弱く、すぐに課金してしまう癖がある。

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