S1Monが脱退、s0mが休養 ── 5年連続で続く「Championsの呪い」を追う

VALORANTの世界大会「VALORANT Champions」
年に一度、世界中のトップチームが集い、その年の最強を決めるこの大会は、まさにVALORANT競技シーンの集大成といえます。
世界中のファンが熱狂し、優勝チームは名実ともに「世界一」の称号を手にします。

しかし、この栄光の裏側で、ある奇妙な現象が毎年のように起きていることをご存じでしょうか。
それが、ファンの間で「Championsの呪い」と呼ばれている現象です。

Championsの呪いとは

「Championsの呪い」とは、大会で優勝したチームが、翌年のChampionsまでに必ず1人以上のメンバーを失うという現象を指します。

しかも、この「呪い」は一度も途切れることなく、5年連続で発動しています。
以下は、その歴代王者たちです。

  • 2021年:Acend(EMEA)

  • 2022年:LOUD(ブラジル)

  • 2023年:Evil Geniuses(北米)

  • 2024年:EDward Gaming(中国)

  • 2025年:NRG(北米)

驚くべきことに、すべてのチームが翌年までにメンバーを変更しており、その理由は毎回まったく異なるのです。
成績不振による再編、財政難による解体、内部の不和、あるいは選手自身の燃え尽き――。同じ「王者の崩壊」という結末でも、その背景にはチームごとのドラマがあります。

それでは、最初に「Championsの呪い」が始まった2021年、初代王者「Acend」から振り返っていきましょう。


2021年:Acend ― 初代王者に降りかかった「最初の呪い」

2021年、「VALORANT Champions 2021」を制したのは、EMEA地域のチーム「Acend」でした。
cNed、zeek、starxo、Kiles、BONECOLDの5名が、ヨーロッパ勢として世界の頂点を目指す戦いに挑戦。
大会ではTeam SecretやTeam Liquid、そして強豪Gambit Esportsを撃破し、初代「世界王者」という称号を手にしました。

しかし、栄光からわずか数か月後、チームには早くも変化が訪れます。

2022年シーズンの「Champions Tour Stage 1: EMEA Challengers」でグループ敗退という結果に終わったAcendは、3月にIGL(インゲームリーダー)のBONECOLDをベンチへ、続いて4月にはKilesもロスターから外す決断を下しました。
大会成績を受け、再構築という形ではありましたが、結果的に優勝メンバーの離脱という形で「Championsの呪い」は初めて現実のものとなりました。

チームはその後も苦戦を続け、2022年シーズンの終盤にはフランチャイズ制度(国際リーグ)への参加選考にも落選
この落選はチームにとって致命的で、残されたメンバーたちも次々と他チームへ移籍していきました。

優勝チームが崩壊したことは、VALORANT競技シーンの厳しさを象徴する出来事でした。
勝利の余韻が残る中、チームは制度の変化や結果への期待という現実的な課題に直面しました。

2022年:LOUD ― 王者が選んだ「新たな挑戦」

2022年、「VALORANT Champions 2022」を制したのは、ブラジルのチーム「LOUD」でした。
Saadhak、Sacy、pANcada、aspas、Lessの5名が、ブラジル国内リーグを圧倒して頂点に立ち、Championsへの出場を決定。
Championsでは決勝で北米の強豪OpTic Gamingを3-1で破り、ブラジルとして初めての国際タイトルを手にしています。

しかし、優勝から間もなく、チームに劇的な変化が訪れます。
2022年10月、SacyとpANcadaが北米の名門チームSentinelsへ移籍することが報じられました。

両選手の移籍発表に際して、SacyはX(旧Twitter)でこう述べています。

「英語のおかげでキャリアに新しい挑戦ができて、文字通り子供の頃の夢を生きてる感じなんだ。」

この発言からも、移籍は単なる待遇や契約の話ではなく、自らの夢やキャリアステップを考えた上での決断だったことがうかがえます。

このように、2022年のLOUDは優勝という栄冠とともに、翌シーズンまでにメンバーが必ず離脱する「Championsの呪い」にしっかり該当しています。そして、その理由が「敗北」や「制度崩壊」ではなく、むしろ成功したからこそのステップアップ移籍であった点が特徴的でした。

LOUDの優勝後は、勝者が「安定維持」を選ぶのではなく、「更なる挑戦」のために自ら動くという形になりました。

2023年:Evil Geniuses ― 北米王者の栄光と、栄光の裏に潜んでいた「現実」

2023年、「VALORANT Champions 2023」を制したのは、北米のチーム「Evil Geniuses」(以下、EG)でした。
Ethan、jawgemo、C0M、Demon1、Boostioの5名が北米代表として世界の頂点を目指す戦いに挑戦。
大会では、プレイオフで2022年王者LOUDを下し、決勝ではPaper Rexに3-1で勝利。

Demon1の爆発的な活躍、potterコーチの緻密な戦略、そしてチーム全体の勢いが完璧に噛み合い、北米チームとして初のVALORANT Champions制覇という歴史的快挙を成し遂げました。

しかし、その歓喜の瞬間からわずか数週間後、チームには不穏な空気が流れ始めます。
複数の海外メディアが報じたところによると、EGは優勝ロスターに対し、給与カットまたは契約終了を提示。
「継続する場合は大幅な減額」「他チームのオファーを自由に検討せよ」という方針が通達されたとされています。

これにより、チームは急速に崩壊の道をたどります。
2023年9月にはサブメンバーと複数のコーチが離脱、さらに翌2024年初頭には優勝ロスターの一部選手も移籍を決断。
「世界王者」となったにも関わらず、翌年のChampionsを前にチーム体制が大きく崩れるという結果になりました。

その背景には、組織の財政的課題もありました。
EG全体が経営縮小を進めており、VALORANT部門も例外ではありませんでした。
優勝という成功が、皮肉にも「コストの見直し」や「契約再編」という現実的な判断を引き起こしました。

EGは、まさに「勝ったチームほど維持が難しい」という、eスポーツならではの現実に直面しました。
歓喜に包まれた優勝の瞬間からわずか数か月後、彼らを待っていたのは祝福ではなく、「契約」や「資金」といった「現実的な壁」でした。

2024年:EDward Gaming ― 栄光の頂点で生まれた「すれ違い」

2024年、「VALORANT Champions 2024」を制したのは、中国のチーム「EDward Gaming」(以下、EDG)でした。
ZmjjKK、nobody、CHICHOO、smoggy、S1Monの5名で構成されたEDGが、中国チームとして初の世界王者となりました。
攻撃的かつ緻密な戦術、そしてZmjjKKの圧倒的な個人技が世界を魅了し、アジア地域のVALORANTシーンに新たな希望をもたらしました。

しかし、栄光の裏でチームには小さな亀裂が生まれ始めていました。

優勝後のオフシーズン、メンバーの一人「S1Mon」がベンチ入りとなり、
その後、チームとの不和や態度を巡る議論がSNSやファンコミュニティで大きな話題となります。

EDGの関係者は、「練習時間やチーム内での姿勢に問題があった」とコメント。

海外スレッドでは「S1Monはチームの内部運営に不満があったのではないか」と推測されています。
この問題は、SNS上でファンを巻き込んだ論争へと発展しました。

2025年8月、EDGは正式にS1Monの脱退を発表。
中国初の世界王者チームは、優勝からわずか一年足らずでメンバー変更を余儀なくされました。
これにより、EDGも例外なく「Championsの呪い」に飲み込まれたことになります。

S1Monの離脱は、単なる「選手交代」という枠を超えた出来事でした。
彼らの間に生じた「すれ違い」は、人と人との関係がチームを支えていることを改めて示した出来事となりました。「勝つこと」と「続けること」がまったく別の難しさを持つということを世界に示しました。
勝利の先には歓喜だけではなく、互いを信じ続けることが必要なのかもしれません。

2025年:NRG ― 勝者が自ら選んだ「一区切り」

2025年、「VALORANT Champions 2025」を制したのは、北米のチーム「NRG」でした。Ethan、s0m、mada、brawk、skubaの5名で構成されたNRGは、決勝でEMEAの強豪Fnaticを3-2の激戦で下し、EGに次いで2度目の北米チームの優勝を飾りました。

優勝直後の 2025年10月、チームの中心選手s0mが「競技活動を一時休止する」旨を発表しています。

彼は自身のYouTubeで以下のように述べています。

「飛び入りでしばらく休むことにした。引退ということではない。
少しだけ競技から離れるだけになる。14歳の時から始め、10年近くやってるから。
最近のChampions優勝を機に、今がちょうどいいタイミングだと思った。」

この動きにより、NRGもまた「Championsの呪い」の条件を満たしました。

ただし、他の年とは違い、s0mは悲劇的な脱退ではありません。
むしろそれは、VALORANTプロ選手として目指していた「頂点」に達したからこその解放と安堵に近いものでした。

長年の努力の末にたどり着いた世界の頂点。
そこに立ったからこそ、彼は次のステージへ向けて、一度深呼吸をするように歩みを止めたのだと考えています。

確かに、形式的には「優勝チームから人が離れる」という条件を満たしています。
しかし、このケースを「呪い」と呼ぶのは、少し違うのかもしれません。

過去4年間の王者たちがさまざまな理由で崩壊や脱退を経験してきた中で、NRGのロスター変更は、「勝者が自らの意志で一区切りをつけた」という、むしろ「理想的な形」にも見えます。

5年間を通して見えた「Championsの呪い」の正体

2021年から2025年まで、VALORANT Championsの歴史を振り返ると、初代王者Acendから最新のNRGに至るまで、5年連続で王者のロスター変化が起こっていることが分かります。

そして、どの年も「崩壊の理由」がまったく異なる点が特徴的です。

  • Acendのように、環境変化と制度に飲まれた王者

  • LOUDのように、成功を糧に新たな挑戦へ踏み出した王者

  • EGのように、経営の現実とぶつかった王者

  • EDGのように、内部の信頼関係が崩れた王者

  • NRGのように、夢を叶え、静かに休息を選んだ王者

それぞれが異なる理由でチームの形を変えており、「同じ呪いでも、発動のしかたはまるで違う」という点が、この現象をさらに興味深いものにしています。

しかし、この5年間の流れを見ると、「Championsの呪い」は単なる「チームの崩壊」ではなく、VALORANTという競技が成長し、チームと選手が次のステージへ進化している過程とも言えるでしょう。

勝利を経たチームが「より良い環境を求めて動く」「個人として次の挑戦を選ぶ」。
それは、eスポーツが持続的なキャリアの場として成長している証拠でもあります。

Acendから始まり、NRGに至るまで──。
5年連続で続いた「Championsの呪い」は、もはや偶然ではありません。
それは、VALORANTという舞台で戦う人たちの「成長」「変化」を表す出来事でした。

そして、今年優勝を果たしたNRGEthanは、その「呪い」を乗り越える形で、VALORANT史上初となるChampions 2度目の優勝という快挙を成し遂げています。

「呪い」と聞くとどこか不吉に感じられますが、その果てにはいつも、新たな始まりが待っています。
優勝の裏にある別れも、変化も、すべては次の挑戦へとつながる道の一部なのです。

果たして来年の王者はどのチームになるのか。
そして再び「呪い」は発動するのか。
VALORANT競技シーンの新たな1年に、今から期待が高まります。

なる

24歳のライター。推しのVALORANTプロ選手はkaajakとsato。
ArcaneやChampionsスキンなどの限定スキンに弱く、すぐに課金してしまう癖がある。

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